ゆめ通信(2013年)

 

 

 2013725日号

 

 暑中お見舞い申し上げます。

 皆様、猛暑の中いかがお過ごしでしょうか。
 さて、当財団は7月25日で、ちょうど設立9カ月を迎えました。
 4月には、第1回目の受賞者を選考し、授賞式・パーティーも成功裏に実施でき、6月には新たに新年度の活動を開始しました。あらためて、これまでの皆様のお力添えに感謝いたします。

 さて、財団の当サイトも、これまで同様、皆様との意見交換の場として活用していただきたいと考えております。


 私は、最近のネット社会における“ことば”が気になります。

 「ころしたるわいゆうたら、わかった、ころしにこいやといわれ、ころしよった。」


 広島の同級生少女殺人事件の容疑者とみられる16歳の少女が書き込んだ、スマートフォンの通信アプリ「LINE」におけることばです。その後、警察発表の事件の詳細が次々と報道されますが、私は、びっくりするほどそぎ落とされた、この少女のことばの裏にある、真実の深さには到底たどり着けません。
 16歳の若者たちがすでに見てしまった世界の暗さと、ギザギザと歯こぼれした鋭利なナイフを見ているような感覚に、私は、ただただ打ちのめされるばかりです。

 一方、政治の世界のことばにも気になることがいくつもあります。
 ネット利用が解禁され、初めての参議院議員選挙、自民党によってネット中継された総理演説の画面を見ました。例によって、いいね、頑張れ等のショートコメントが無数流れて、映像は見えず、中で語られることば頭に残らず、いいね、いいねの総体が醸し出す、熱気とムードしか伝わりませんでした。

 民主主義の基本は、ことばです。事の本質を提示し、じっくりと議論を戦わせ、妥協点を見つけるのが民主主義です。当然、選挙では誰もがことばで政策を訴えます。しかし、今回の選挙、意図的といえるほど、政策について語られることのなかったのはなぜでしょう。
 政策が語られない中、ネット上で交わされる、「いいね」や感嘆フレーズによる圧倒的賛成か、ブログ炎上に見られる圧倒的反対か、という二元論によって、時間をかけて(=熟慮して)賛否を見極めようとする中間層が排除され、結果として、彼らが棄権に回ったことも、52%台の低投票率になったとはいえないでしょうか。

 選挙の結果、翌朝のメディアは、揃って「自民圧勝、ねじれ解消」と報じました。これは、ことばの作為的誤用だと思いませんか。衆議院のチェック機能を持つ参議院の議席逆転現象を、ねじれ(=よくない現象)とし、だから解消(=改善)する、という与党自民党の主張をメディアは、そのこと自体の善悪を議論、検証せずに報道し、国民はその主張を疑いもせずに受け入れた、とはうがった見方でしょうか。

 このように、今回の選挙で見られた、ことばの軽視、無視、誤用、短縮されたことばの軽さは、結果として、国民から熟慮することを奪ってしまったのです。これは、むなしく、また悔しいことです。

 思えば、佐藤栄作首相の「新聞出てゆけ、テレビだけ残れ」以来、政治が、論点を精緻に議論できる新聞を意識的に遠ざけ、ことばより、視覚による感性に訴えやすいテレビを好み、小泉劇場という、政治とテレビの蜜月状態を経て、短いつぶやきや、感嘆フレーズを端的な表現手段とするネットに向かう道は、自分たちの政治をやりやすくするための、政治家たちの確信的行動でなかったかと、今更ながら思い至りもするのです。

 テレビが、我々の手の内に入って60年、ネット社会も、たかだか10年です。
 その中で、政治の世界も、メディアの世界も、そして国民自身も、ことばを軽視し、熟慮を排除してゆく必然があるとは、思いたくもありません。少なくも、メディアに生きるひとりとして、その流れを加速させる共同正犯の役割を担ってはならないと、私は強く思います。

 翻って、テレビドラマにおける“ことば”についてです。
 ことばの連なりが元になり、映像が構成され、人に感動を与える。言うまでもなく、それがテレビドラマです。

 今ドラマは、政治の世界や、ネットの世界同様に、ことばが軽視される傾向にあります。今時のネット社会に生きる視聴者から視聴率を獲得するためには、映像重視、短く直截な表現が好まれるのは当然でしょうし、ドラマはことばが全てではありません。しかし時には、あえてドラマの源、ドラマの基本である、ことば=台詞やナレーションに、ひたすらこだわるドラマ、いってみれば「ことばで魅せるドラマ」があってよいと思いますが、いかがでしょうか。
 議論ディスカッションだけのドラマ、美しい日本語にこだわるドラマ、台詞だけでドラマのストーリーを完結させた名作は過去にもたくさんあります。「12人の怒れる男」などは、その好例だと思います。

 私が以上のようなことを考える背景に、昨今のメディア状況があります。
 ひとつは、多様な視聴者の出現です。最近の調査で、CS、BSのゴールデン枠の視聴率が8%に達したという結果が発表されました。また、若者の多くは、以前から番組の多くをネットパソコン上で視聴し、VODが普通のものとなった現在、人々は、アーカイブ=本のようにテレビソフトを鑑賞しています。また、ラジオドラマに関心を寄せる人たちが最近多くなったとの声も聞きます。自分でメディアを選択し、好きな時間にそれを楽しむ。深くひとりで感動したい、じっくり考えたい、つまり熟慮を求める人たちが増えています。

 もう一つは、多様な視聴者の出現に対応するように、メディアの融合が進み、あわせて、ソフト制作も多様となり、簡便化、低廉化され、多様な制作者たちも出現しています。つまり、ソフトを提供する側の多様化です。テレビドラマなるものが、映画、テレビ(当然BS、CSを含む)、そしてネット上と、多様な表現の場を求めることが可能となりました。表現の場に境界はありません。表現者にとって、経済性はともかく、視聴率が頚木(くびき)となるようなことが無くなる時代の到来といっていいのかもしれません。

 多くは言いますまい、このような変化の時代だからこそ、怖いものなし、何でもやってみたらいい。一分の志あれば、なんでもOKとなるのがドラマです。どんなことに凝ってもいい、どんなことにこだわってもいい。しかし、ことばが粗末にされる時代、ドラマの世界であればこそ、逆に、ドラマの原点にある、ことばによる挑戦をしてみたらいかがでしょうか。

 この脚本賞財団の今後の活動、次回以降の脚本賞の選奨を考えてみたときに、“ことば”の持つ重要性に改めて思い至ったという次第です。


2013年 7月25日 

 

常務理事  渡辺紘史

 

 

 

 

 201311日号

 

あけましておめでとうございます。

会員の皆さまには、旧年中は本当にお世話になりました。ありがとうございます。

 

さて、自己紹介が遅れましたが、私、事務局の菅野高至(すがのたかゆき)と申します。

ご提言やご注文、なんなりと遠慮無く私あてにお申し付け下さい。

ご意見等は、ホームページのメッセージ・問い合わせ欄、

あるいは、財団のE-mailzaidan@ichikawa-kyakuhon.com  にお寄せください。

「市川森一脚本賞」を夢あふるる素敵な脚本賞にするため、会員の皆さまとともに手を携えて歩んで参ります。

長いお付き合いになろうかと思いますが、よろしくお願い申し上げます。

 

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会員の皆様 

あけましておめでとうございます。

 

市川森一脚本賞財団の設立を皆さんに呼びかけたのは、昨年の9月の末でした。

わずか3カ月で、会員200人以上の財団として新しい年を迎えることができ、理事一同、身の引き締まる思いでおります。

改めて、脚本家市川森一そして市川ドラマが、いかに多くの皆さんに愛されていたのか、そして、心ときめく優れたドラマを待ち望んでいる皆さんがいかに多いのかも実感しました。

会員の皆様には、改めてお礼を申し上げます。これからも、皆さんとご一緒に財団活動を進めてまいりましょう。よろしくお願いします。

 

財団はさっそく第一回の受賞者の選考に入ります。

そして4月に予定する授賞式パーティやイベントの準備も始めます。

市川さんの創作を長年にわたって支え、財団の設立にも大きな力を貸していただいた長崎の皆さんにも、この賞がどうお役に立てるのか。長崎でのイベント、これも長崎の皆さんと一緒に計画をスタートさせます。

 

ただ、以上のことはまだ、何も決まったことではありません。夢を描いているに等しいことかもしれません。

何もないところから脚本を紡ぎ出し、ドラマを現実化させ、ドラマを見る者に生きる糧としての夢を与えてきた、作家市川森一さんのキーワードは「夢」です。

財団は、一つ一つ夢を描き、その夢を会員の皆さんとともに追い求め、実現させてゆきたいと思います。これからもよろしくお願いいたします。

 

専務理事 髙橋康夫

常務理事 渡辺紘史

 

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皆様、新年おめでとうございます。

 

夫を亡くして二度目のお正月を迎えました。

昨年は喪中でしたのでおせち料理も用意しませんでしたが、今年は夫の好物たたきごぼうやカツオ菜入りの長崎流お雑煮などで、ささやかに新春を寿いでいます。

 

昨年は思いがけ ず、市川の名前を冠した脚本賞のお話をいただき、とても嬉しく思いました。でも本当に実現できるのか少々不安でしたが、私も何度も長崎に往復したり多くの 各界の方にお会いしたりしている間に、皆様の市川にお寄せくださる温かい思いの深さに触れ、次第に心が固まっていきました。

 

無事市川脚本賞財団も設立され、いよいよ今年から本格的な活動開始となります。

私も微力ながら、この脚本賞のために骨身を惜しまず働かせていただく覚悟を、新しい年の初めにさせていただきました。

 

市川は常々「若き才能ある脚本家の登場を期待している」と言っておりましたが、そのような方を応援させていただけるような脚本賞となりますよう、皆様おひとりおひとりにこの脚本賞を末永く応援していただきたく願っています。

 

どうぞよろしくお願い申し上げます。

 

市川美保子